漢方について

漢方

漢方は、元々は中国で行われた治療法が日本に輸入され、その後は日本で独自の発展を遂げた伝統医学です。明治時代には、西洋医学を学んだ者のみを医師に認定した影響で、一時は影を潜めました。しかし、その後も多くの医師たちが漢方医学を発展させ、治療を行ってきました。最近は、漢方の良さが広く再認識されており、医学部の講義でも必修科目になっています。

東洋医学

東洋医学では、体の不調を体の内側から改善させることを目指します。また、病気を未然に防ぐため、病気になりにくい体質を作り上げていくという考え方もあります(未病治療)。そのため、短期的に症状を和らげるだけでなく、長期的な視点で治療を進めていきます。

西洋医学と相反するものではありません

漢方は、決して西洋医学と相反するものではありません。それぞれのメリットを活かし、西洋医学的な手法を漢方治療と組み合わせていくことも可能です。また、漢方は効くのが遅い、保険が利かないというイメージがあるようですが、決してそんなことはありません。急性疾患に対して速効性が認められている漢方もありますし、健康保険適用の漢方製剤もたくさんあります。当院では、患者様の症状を見極め、漢方治療を進めてまいります。

このような方にお勧めです

  • 自覚症状があるものの、検査をしても異常が見つからない
  • 西洋医学的な治療では十分な効果が得られなかった
  • 西洋医学で処方された医薬品の副作用に悩んでいる
  • 身体のだるさが続いている
  • 冷えやのぼせ、肩こり、便秘、下痢などが続いている
  • 不安やイライラ、不眠などに悩んでいる
  • 立ちくらみ、めまいなどの症状がある
  • 虚弱体質で疲れやすく、風邪をひきやすい など

「気」「血」「水」のバランスをとることが大事

漢方では、誰もがもともと兼ね備えている自然治癒力を高め、体の状態を整える効果が得られます。一人一人の自然治癒力を高めるため、病名で診断するだけでなく、体質や病気の状態によって最適な薬を選び、使い分けます。

具体的には、漢方の考えである「気」、「血」、「水」のバランスをとります。このうち「気」は、私たちの生命を維持するための根源的なエネルギーです。「血」は、血液と同等のものです。これがうまく働くことにより、酸素や栄養素が全身の隅々まで行き届くのです。「水」は、体の内部にある透明な液体です。この水分が機能することによって免疫力なども高まります。当院では、患者様の「気」、「血」、「水」を考慮しながら治療を進めてまいります。

当院では各分野の疾患に対する漢方治療を行いますが、特に循環器疾患に対する漢方治療に力を入れています。

循環器と漢方の融合治療について
心臓・血管の病気、いわゆる循環器疾患に対しては、診療ガイドラインに基づく西洋医学的治療が行われることが一般的です(Evidence Based Medicine:EBMと言います)。
しかし、そういった標準治療が体力の低下したご高齢の方にとっては負担となり、その結果腎機能低下などの副作用が生じたりする場合があります。
また、十分な西洋薬(冠血管拡張薬)を服用しても胸痛発作を完全に予防できない難治性の狭心症(冠攣縮性狭心症)や、検査で異常が見つからない胸部症状(動悸や胸痛、胸部不快感など)に対しては、診療ガイドラインに沿った治療だけでは対応が困難です。
そのような状況をはじめとして、循環器診療の様々な状況において、漢方薬は標準治療をサポートし、ガイドラインの隙間を埋める役割を果たします。
当院では、循環器診療に漢方治療を積極的に取り入れ、“体に優しい医療”を目指します。
心臓血管疾患・循環器疾患 心不全、浮腫
不整脈、動悸
虚血性心疾患(冠攣縮性狭心症)
起立性調節障害、低血圧失神(心原性を除く)
生活習慣病 高血圧症
肥満糖尿病に伴う末梢神経障害 など
その他 循環器疾患治療薬による副作用対策
(腎機能悪化、電解質異常、こむら返り等)
浮腫
フレイル・サルコペニア
心不全を悪化させる感染症予防 など

フレイル・サルコペニア対策のための漢方治療

フレイルとは

加齢などに伴って身体機能や精神機能が低下したり、社会との繋がりが少なくなり、心身ともに弱った状態をフレイルといいます。はっきりした自覚症状はみられなかったとしても、慢性的に体調がすぐれない人は要注意です。適切な対策を講じないとどんどん進行していき、要介護状態になったり、健康寿命の低下を招いたりします。フレイルは「虚弱」、「衰弱」、「脆弱」などとも訳されますが、有効的な対策によって健康な状態に戻る場合もありますので、お早めにご相談ください。

サルコペニアとは

加齢などに伴って筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下してくることをサルコペニアといいます。これに伴って転倒リスクが高まったり、ちょっとした事で骨折して要介護状態に陥る原因となったりします。骨格筋の萎縮や筋力低下を契機として寝たきり状態になるケースも少なくありません。高齢になるほど増加し、85歳以上になると半数以上がサルコペニアだといわれています。過度の食事制限によるダイエットを行っている場合、比較的に若い段階でサルコペニアになることがあります。なお、サルコペニアに肥満が重なると心血管イベント(脳梗塞や心筋梗塞 等の心血管系の病気)の確率が上昇すると考えられています。

フレイル、サルコペニア対策のための漢方治療

当院では、フレイルやサルコペニア対策のため、漢方治療を積極的に取り入れています。適切に治療を進めることにより、身体機能の低下などを抑え、日常生活の質を維持する効果が得られます。患者様に寄り添って処方いたしますので、まずはご相談ください。