冠攣縮性狭心症の診療ガイドラインに漢方薬が掲載されました!

新神戸きたむら内科 循環器・漢方クリニック院長の北村順です。今回は、個人的にとても嬉しい出来事がありましたので、ブログでお知らせします。

2023年3月に冠攣縮性狭心症に関する新しいガイドライン『2023年JCS/CVIT/JCCガイドライン フォーカスアップデート版 冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害の診断と治療』が発行されました(https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_hokimoto.pdf)。

診療ガイドラインというのは、医学的根拠に基づいた標準治療の指針を示したものです。各分野の各学会が定期的に改訂して公表することが多いのですが、今回のガイドラインは2013年に発行された『冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)』のフォーカスアップデート版…つまり部分改訂版となります。

今回の改訂で画期的だったのは…何と言っても漢方薬が取り上げられたこと!!!

2013年に拙著『循環器医が知っておくべき漢方薬(文光堂)』を出版してから10年、漢方薬・漢方治療が日本循環器学会の発表する診療ガイドラインに掲載されることを一つの目標として講演・執筆活動を行ってきました。冠攣縮性狭心症は、自分が循環器疾患に対して漢方治療を試みた最初の疾患でもありますので、今回のガイドライン改訂は個人的にとても嬉しいことでした。

記載内容について少し説明しますと…

冠攣縮性狭心症患者に対する漢方薬の推奨クラスはⅡbで『冠攣縮性狭心症患者に対し,漢方薬の投与を考慮してもよい』と評価されました。

推奨クラスⅡbですから、『エビデンス・見解から,有効性・有用性がそれほど確立されていない』と評価されたことになりますが、そもそも循環器領域で漢方薬を用いた大規模臨床研究がこれまで行われて来なかった訳ですから、Ⅱbの評価は当然です。それよりも『漢方薬の投与を考慮してもよい』と記載されたことは本当に大きい。これから推奨クラス・エビデンスレベルが上がっていけば良いのですから。

具体的に取り上げられた漢方薬は、四逆散、桂枝茯苓丸、柴朴湯でしたが、ガイドラインに掲載されたことによって今後は冠攣縮性狭心症に漢方薬が処方される機会が増えてくるでしょう。処方される機会が増えれば、それだけデータが蓄積されます。データが蓄積されると新しいエビデンスの構築にもつながると思います。

私のような循環器専門医かつ漢方専門医という特殊な人間だけでなく、一般の循環器内科の先生方が処方して下さることで、漢方薬の使い分けについてもアッと驚くような法則が見つかるかもしれません。ワクワクしますね。

とにかく、今回のガイドライン改訂は私にとって驚きであり、喜びでした。これを弾みとして、今後さらに循環器漢方の良さを広める活動を行っていきたいと思います。

…最後に…新神戸きたむら内科 循環器・漢方クリニックでは、もちろん難治性冠攣縮性狭心症患者さんの漢方治療を行っています。冠攣縮性狭心症の発作コントロールが難しくてお困りの方は是非ご相談下さい。